「部活動で意欲のない状況をどう指導するか」
今回は,「部活動で意欲のない状況をどう指導するか」についてです。
夏は,部活動の新旧交代が行われる時期です。
これまでの部活動での取組を振り返って,顧問としてなんとなくうまくいったいなかった部活動でも,この時期に心機一転よりよい部活動にしていきたいという思いがあることでしょう。
けれども,なかなかうまくまとまらず,やる気が感じられない。
そんな状況を少しでも打破するためにはどうしたらよいか。
本来,部活動は指向の合った生徒の集まりであり,それ自体で学級づくりや授業づくりよりもやりやすいはず。しかし,様々な状況や要因から意欲を失ってしまう生徒が出てくるのも事実です。そのことが「勇気づけ会議」にあがりました。
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<F:ファシリテーターの教師 B:ボランティアの教師>
(前略)
F:意欲を感じないのは,全体的にですか個人的にですか?
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B:全体的にです。一人一人は意欲はあるようですが,全体となる今一つなのです。
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F:具体的にはどんな様子なのですか?
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B:やる気を感じない(声が出ない,だらだらしている,準備がおそい)のです。
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F: そうですか。先生としては「声が出て,機敏に行動し,準備を早くできる」ような状態を「意欲がある」と考えているのですね。
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B:はい,そうです。
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F:ところで,部全体としての目標をもたれていますか。
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B:何となくという感じで,どうもあまりはっきり意識がないようです。
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F:では,まずは「みんなで一つの目標を決め」てみてはどうでしょうか。例えば,「全員初段をとる」とか「県大会出場」とか。
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B:県大会出場とかだったらあるのですが。
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F:なるほど。とりあえず目標はあるのだが,そのことのためにどのように行動すべきか。行動化がなされていないということですね。
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B:そうだと思います。
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F:ところでその県大会出場という目標は,誰がが決めたのですか。
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B:「誰」ということはないのですが,まずは,それが目標という感じです。
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F:なるほど,目標が自分たちのものとして,しっかりとらえられていないことが,「行動化」がなされない原因になっているということになるでしょうか。
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B:そうかもしれません。
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F:では,次のような代替案はどうでしょうか。
まずは,もう一度自分たちで「部としての目標」を考えさせてみてはどうでしょうか。ただし,ここで,大切なのは「生徒自身がみんなで決める(自己決定させる)」ということです。
先生が「こうしなさい」と押し付けるのではなく,とにかく,自分たちの部活動の目標を自分たちで考えさせてみるのです。そもそも,子どもたちは「その競技がうまくなりたい」「上手にできるようになりたい」「試合で勝ちたい」等の思いを持って,部活動を始めているわけで,その意味ではそもそも目的意識をもっています。それを再度引き出させ,再確認し,また,部活動全体の目標としてつなげていくことが必要と考えます。
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B:具体的な取り組み方が知りたいのですが。
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F:例えば,次のような手順はどうでしょうか。
1 「こんな部にしたい」という思いを一つずつ一人一人カードに書かせる。
2 書き終わったものは,黒板等にはりつけて見えるようにする。
3 教師がそれを,キーワードに線を引きながら一つづつ読み上げる。
4 次に,「そういった部にするために欠けている点」を再度カードに書かせる。
5 欠けている点を読み上げながら,3つくらいにグルーピングする。
6 「こんな部にしたい」が部のみんなの目標であり「欠けている点」が部の努力点であることを分からせて,部全体の目標(努力点)を作らせる
7 目標や努力点は常に教師からの声かけの視点とする。また,目標や努力点を意識化させるために部活ノートに書かせたり,できれば貼ったりする。
8 さらに,一人一人の目標達成を意識させるには,例えばその目標までに「どんな練習を」「何時間」やる「1日ではこれくらいやる」など数値化していくことが大切。
(特に,いきなり「全国制覇」などと,あまりにも現在の実状から懸け離れた目標を立てたりする場合は,目標の設定について助言することが必要でしょう)
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B:ありがとうございました。試してみたいと思います。(以下略)
この流れで,取り組んだ実際の事例を紹介します。
《こんな部にしたい》
○大きな声が出て,まとまりのある部
○けじめのある元気な部
○練習が一生懸命できる部
○楽しい時は,おもいっきり楽しんでやるべきことはちゃんとする部
○あいさつがしっかりできる部
○みんなで協力してがんばる部
○みんなが仲がよく助け合える部
○みんなが仲良しで,お互い思いやりの気持ちをもっている部
○仲間意識を大切にする部
○応援の時にみんなが一緒になって一生懸命応援する部
○先輩後輩が関係なくみんな仲良しでまとまりのある部
○先輩も後輩も仲がよくて,協力しあう部
○先輩,後輩が仲のいい部
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キーワード
「協力」「まとまり」「けじめ」「元気」「声が出る」「仲がよい」
《そういった部にするために欠けている点》
○練習や試合の時に大きな声を出す!
○声が小さい
○応援の時,声が小さい
○けじめがない
○けじめ,「はい」と返事ができない
○練習中に無駄話をしない
○元気がない,けじめ
○練習で話をしたり,けじめをつけていない。
○練習のとき,だらだらしない。
○しっかりけじめをつける。
○けじめ,行動の早さ,声の大きさ
○けじめ,練習内容,応援の声,進んで行動
○練習のとき,おしゃべりが多くて行動が遅くなる
○応援
○部活に行くのが遅い。
○仕事を特定の人にまかせている。
○練習に集中する
○けじめをつける
○練習のときムダなおしゃべりをしたりする。
○声が出ない。
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キーワード
「声だし,声かけ」,「けじめ,機敏な行動」
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これらから部の目標は……
「互いに協力し合い,けじめのある元気な部」
努力点は
「練習のときに大きな声であいさつや返事をする」
「練習計画をきちんと立てて時間を決めて練習する」
「自分の個人目標を決めて練習する」
(個人目標も同じ日に決めました)
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この部は,次の日から確実に行動変容が見られました。
具体的には
○練習開始終了のあいさつが大きくなった。
○練習の球拾いでは,上級生が進んで拾うようになった。
○伸び伸びとしたプレイをしている。
○次の練習メニューを早めに確認して行動にうつした。
(ふだん,褒めることの少ない外部コーチの先生もこの日の動きには感心していたそうです。)