事例1「チャイム着席をできるようにするにはどうしたらいいか」


 本校では,「チャイム着席」(チャイムがなった時にはきちんと着席している)が約束事として決められている。今年度は,極力,大声を出して怒鳴つけたりして行動させる(外発的動機づけ)のではなく,自分たちで守らないといけないのでそうする(内発的動機づけ)によって,行動できるようにしようと心に決めた。
 そこで,4月の初めの時期に,チャイム着席が連続してできなかった時をとらえて,次のようにして,授業内で「クラス議会」を開いた。(Tは教師,Sは生徒)
T:チャイム着席の必要性については,授業の最初の時間に話しました。私は,50分の授業時間を大事にするためにチャイム着席をきちんと守って欲しいのですが,チャイム着席がきちんと守ることに反対だという人はいますか。

S:ーし〜んー(いない)

T:それでは,「チャイム着席をできるようにするにはどうしたらいいか」ということで話合いをしてもらいたいと思いますが,よろしいですか。

S:「はい」という声があがる。

T:それでは,まず,それぞれの班で「こうしたら『チャイム着席をできるようになるのではないか』という案を出してください。そのときに,約束があります。それは,「出された案(アイデア)を絶対に批判しない」ということです。どんなアイデアでもいいので,司会の人(班長)は記録しておいてください。アイデアは,多ければ多いほどいいです。この話合いのやり方をブレーンストーミングといいます。

S:本当にどんな意見でもいいのですか?

T:はい。出された意見は,後ですべて黒板に書きます。そして,その中から「これなら自分たちの班はできそうだ」というものを選んでもらいます。話合いの時間は5分にします。では,班長を中心に案を出し合いなさい。

S:(各班毎にどんどん意見を発表し書き留めている)5分経過

T:はい,話合いをやめてください。それでは,1班から発表してください。

S:(1班から順にそれぞれ発表する)

T:○組のみんなはすばらしいですね。自分たちを向上させようとこんなにたくさんのアイデアを出してくれました。ブレーンストーミングでは,より多くのアイデアを出したほうが良いとされています一番多かった班は○班でしたね。はい,拍手!

S:(パチパチ)

T:では,黒板に出された案で,実際に効果がありそうな解決策はどれですか。自分たちがやるとしたら,「この方法ならちゃんとチャイム着席ができそうだぞ」というものを選んでみましょう。後で,それを選んだ理由も一緒に発表してもらいますので,選んだ理由も言えるようにしておいてください。では,各班で考えてみてください。時間は3分。

S:(各班毎に話合っている)

T:それでは,自分たちができそうなものを発表してください。その際に,なぜそれを選んだのかの理由も一緒に発表してください。

S:(1班から順に発表)(教師は発表されたものに印をつけていく。同じものが発表された場合は「正」の字を書いていく)

T:なるほど,みなさんが「この方法ならちゃんとチャイム着席ができそうだぞ」と考えた案は,これらですね。理由もきちんと発表できましたね。ますます○組はすごい力があると思いました。では,自分の班で決めたものでもいいし,他の班の理由に納得した班は他の班が選んだ案でもいいので,自分たちの班でそれぞれ実行できる案を決めてください。きまった班は,この色画用紙に解決策をかいてください。
(この際,班毎ではなく,学級で一つの案にしぼるバージョンもある)

T:今日は「チャイム着席をできるようにするにはどうしたらいいか」ということで,自分たちでその具体的な解決策を考えることができましたね。ここに出された各班の解決策を,まずはしばらく実行していってほしいと思います。今日,チャイム着席のことを真剣に話合っているみなさんの姿を見て,すばらしいなと感じました。協力してくれてありがとうございました。
 それから,この各班で決まった解決策のポスターを誰かボランティアで教室に貼ってもらえませんか。

S:(しばらく待っていると)数名手があがる。(できるだけ待つ方が良い)

T:ありがとう。こういうところも○組の素晴らしさですね。


この話合いの後(1学期の間),私が行く3つの学級のうち2つの学級はほとんど,チャイム着席におくれることはなかった。うまくいかなかった1つの学級は,再度,解決策を話合った。その際に,大切なのは,
「守れなかった人」を攻めるのではなく,「守れない解決策」が悪いのであり,「守れる解決策」を作ればいいのである
ということを押さえて話合いをさせた。
 すると,前回の解決策の良くなかった点を考えて,新たな解決策を考えることができた。それにより,残りの1学級もチャイム着席におくれることはなくなった。