『流線形』段落ごとの要点のまとめ(現代の国語3 三省堂)

流線形             高木隆司

(1)マグロやカツオなどの大洋を回遊する魚は、休憩することなく一生海中を泳ぎ続ける宿命をもっているそうだ。人間のように、「ああ、しんど。」と言って休んだりしないところは本当にすごいと思う。休まなくてよいためには、泳ぐときに水の抵抗がよほど小さいにちがいない。そう思って改めて魚の体形を見てみると、その曲線は実に美しいことに気がつくであろう(図1)。この美しさ、あるいはわたしたちが美しいと思った原因は、魚の体形とどのように関連しているのであろうか?

→「大洋を回遊する魚の美しさ、あるいはわたしたちが美しいと思った原因は、魚の体形とどのように関連しているのであろうか?」(問題提起)

(2)マスを上から見て描いたものが図2aである。この、上から見た魚の形と、アメリカの技術者によって設計された飛行機の翼の断面形(図2b)とを比べると、これらが驚くほどよく一致していることがわかる。自然の中で生まれた形も人工的につくられた形も、極限を追究していくと、結局は同じ到達点にたどり着くようだ。

→「自然の中で生まれた形も人工的につくられた形も、極限を追究していくと、結局は同じ到達点にたどり着く」

(3)魚のこの体形は、泳ぎに伴う水の抵抗をなるべく小さくするのに非常によく適している。この点を理解するためには、流れに置かれた物体に抵抗が生じるしくみについて述べておかねばならない。そのときに、「流線形」という形の概念が重要になる。

→「泳ぎに伴う水の抵抗をなるべく小さくする魚の体形を理解するためには,「流線形」という形の概念が重要になる。」(問題提起1をうけて)

(4)物体に流れが当たると、その周囲に流れの道筋ができる。この道筋を「流線」と呼んでいる。流線形の物体の周囲にできる流線には、次のような大きな特徴がある。図3aに示すように、前方から来た流線のうち一本が物体に当たり(A点)、その両側の流線は滑らかに曲がりながら後ろに伸びていく。さらに、物体の後ろから出ていく流線は、最後尾(B点)から出る一本だけである。

→「流線形の物体の周囲にできる流線の大きな二つの特徴」

(5)実は、最後尾の一点だけから流線が出ていくような物体の形を「流線形」と呼ぶのである。魚の形は、理想的な流線形である。それに対して、流線形でない、ずんぐりした形を「鈍い形」と呼んでいる。

→「「流線形」と「鈍い形」の定義」

(6)鈍い形とは、わかりやすい表現ではないが、ほかに適切な表現がないのでこのことばが使われている。鈍い形の物体では、図3bの球形の例に示すように、前方から来た流線のうちの一本だけが物体に当たる。ところが、後方では二本以上の流線が物体から出ていく。

→「「鈍い形」の物体から出る流線の特徴」

(7)鈍い形の物体では、物体から出ていく流線の間で乱れた流れをもつ「乱流」と呼ばれる状態になる(図中で斜線の領域)。乱流の領域では、後方に向かう速さが遅くなっている。言い換えれば、物体はこの領域の水が後ろに流れ去るのを妨害して、前へ引っぱっているので、その反作用で物体は後ろに引かれることになる。これが物体が受ける力、すなわち水の抵抗である。流線形では、このような乱れた領域はない。したがって、流線形の物体には抵抗がほとんど生じない。

→「鈍い形の物体では、抵抗が生じ,流線形の物体には抵抗がほとんど生じない。」

(8)流線形であるための必要条件は、側面にとがったところがないこと、および後端がとがっていることである。もし後端が丸いと、球形物体と同じで、流線が物体上の二か所から離れるからである。これらの条件を頭に入れておいて、わたしたちの周囲にある実際の形が、流線形かどうか検討してみよう。

→「流線形であるための必要条件を念頭に,わたしたちの周囲にある実際の形が、流線形かどうか検討してみよう。」(提案)

(9)現在の自動車は、ひと昔前とずいぶん違う(図4)。先端の形もさることながら、後端がとがってきたことが特に目につくであろう。それによって流線形に近づいたので、抵抗も確実に減少している。また、最近の新幹線車両の形を見ると、流線形をかなり意識した設計がなされていることがわかる。

→「現在の自動車や最近の新幹線車両の形は流線形をに近づいており,抵抗も確実に減少している」(提案の結論)

(10)ここで、図1のマグロをもう一度見てみよう。横から見ると、背びれや尾びれのために流線形の条件から大きくはずれているように見える。ところが、厳密にいうと、流線形かどうかは横から見た形ではなく、断面積の分布で見なければならない。背びれや尾びれは非常に薄いので、断面積にはほとんど影響しない。実際、薄っぺらいひれにはほとんど抵抗がはたらかず、ひれがついていても、マグロの形は流線形と見なしてよいのである。

→「マグロの形は流線形と見なしてよい」

(11)マグロが一生休まずに泳ぎ続けることができる秘密は、この「流線形」の体形にあるのである。

→「マグロが一生休まずに泳ぎ続けることができる秘密は、「流線形」の体形にある」

〈出典『巻き貝はなぜらせん形か』〉